世界遺産「明治日本の産業革命遺産」登録10周年の軍艦島をゲームで体感
世界遺産の構成資産である「軍艦島(端島炭坑)」が、オンラインゲーム「フォートナイト(Fortnite)」のステージとして公開されました。これは国内初の試み(※1)で、ステージを訪れるユーザー数に応じたゲーム収益が、軍艦島の保全や修復などに役立てられる仕組みです。登録から10周年という節目に、デジタルの世界を通じて軍艦島を支え、さらに多くの人にその歴史や魅力を知ってもらう画期的なプロジェクトが動き出しました。
常設ステージ「GUNKANJIMA ARCHIVE」とは?
今回公開された「GUNKANJIMA ARCHIVE(軍艦島アーカイブ)」は、世界で総ユーザー数5億人以上を誇るフォートナイト内に常設されるステージ。島の大部分を占める立入禁止エリアを含め、精巧な3Dスキャン技術を用いて忠実に再現されているのが最大の特徴です。
通常では立ち入ることができない軍艦島の内部を自由に散策できるだけでなく、フォートナイトに標準搭載されているボートで島を周遊し、上空からの絶景を楽しむといった「現実世界では実現しにくい体験」が可能になります。
また、ステージ内には13箇所のチェックポイントが設置されており、そこで得られる軍艦島にまつわる情報を収集することで、歴史的背景や見どころをより深く知ることができます。
ゲームを楽しみながら軍艦島を応援できる国内初(※1)の仕組み
フォートナイトでは、ゲーム内ステージを多くのユーザーが利用すると、その利用数に応じて運営元から収益が還元される仕組みがあります。今回のプロジェクトでは、このゲーム収益が軍艦島の保存・修復に役立てられるという国内初の取り組みが実現しました。
ユーザーはいつも通りゲームを楽しむだけで、結果的に現実世界の軍艦島をサポートできるため、文化財の保全を「身近なこと」として感じられるのが魅力です。軍艦島は1974年の炭鉱閉山とともに無人島となり、現在は老朽化が進行中。保全には多額の費用がかかるため、新たな資金調達モデルとしても大きな注目を集めています。
公開後も拡張予定! 新コンテンツに期待
「GUNKANJIMA ARCHIVE」は2025年1月20日に公開されたばかりですが、今後さらなるコンテンツ追加が予定されています。3月12日(水)にリリースを予定している追加情報では、より詳細な歴史解説や建築物の再現度を高める要素など、新しい遊び方や知識が得られるアップデートが発表される見込みです。
これにより、より多くのプレイヤーが「軍艦島」の魅力を楽しみながら学べる場が広がっていくことでしょう。
軍艦島アーカイブを体験するには?
軍艦島をゲーム上で体験できるフォートナイトのステージへは、以下の方法でアクセスできます。
・島コード:4058-6239-4733
・特設サイト:https://gunkanjima-archive.jp
・動画URL:https://youtu.be/4pkSOJjHyfY
フォートナイトはプレイステーションやXbox、Switch、Android、PCなどさまざまなプラットフォームで無料プレイが可能。ステージコードを入力するだけで、誰でも軍艦島の仮想空間へアクセスできます。
軍艦島と「HERITAGE DATABANK」の取り組み
「HERITAGE DATABANK(ヘリテージ・データバンク)」は、世界の貴重な自然や文化をデジタルアーカイブし、最新のテクノロジーを通じて活用・保護するプロジェクトです。
軍艦島は、かつて海底炭坑で栄え、多くの人々が暮らしていた場所でしたが、現在は老朽化が進み立ち入りが制限されるエリアがほとんど。そんな軍艦島を3Dスキャンによってリアルに再現し、バーチャルと現実の両面で保存・活用を促進しようとするのがこの取り組みの大きなポイントです。
さらに、世界遺産「明治日本の産業革命遺産」に登録されてから10周年を迎えるにあたり、多くの人々に軍艦島の歴史と現在の状態を知ってもらうとともに、新たな観光モデルや保全方法を示すロールモデルにもなり得ると期待されています。
新たな保全モデルとして注目の「軍艦島」
軍艦島の歴史や文化は日本の近代化を知るうえで非常に重要であり、近年は世界的に文化遺産の保全が大きな課題となっています。長崎市と「HERITAGE DATABANK」がタッグを組み、この軍艦島をバーチャル空間に復元し、ゲーム世界と連動した支援を募る仕組みを作ったことは、全国の自治体や文化財管理団体にとっても大きな参考例となるでしょう。
これをきっかけに、文化遺産を「残す」だけでなく「活用しながら保護する」新しい形が広がり、地域や歴史を超えてより多くの人が文化遺産に触れられるようになるかもしれません。
このユニークな体験を通じて、軍艦島に興味を持つ方が増え、実際の見学ツアーへの参加や寄付・支援にもつながっていくことが期待されます。
ゲームを楽しむ方も、歴史や文化財に関心を持つ方も、ぜひ「GUNKANJIMA ARCHIVE」のステージを訪れてみてはいかがでしょうか。軍艦島の厳かな雰囲気と圧巻の景観を、手軽に・安全に・そして学びながら味わうことができます。
フォートナイトの世界で「もうひとつの軍艦島」を巡る旅が、私たちにとっての新たな文化財保全への一歩となるかもしれません。