石川県加賀市・山中温泉の文化観光施設「加賀依緑園(かがいりょくえん)」では、陶芸家たちの個展を月替わりで楽しめるイベントが開催中。歴史ある建物の趣と自然美に包まれながら、土と真摯に向き合う作家たちの「今」を感じる展示が訪れる人を惹きつけています。
東元 生『斑入 -ふいり-』──混ざり合う土が紡ぐ、静かで力強い世界
2025年3月29日から4月29日まで開催中の東元 生(ひがしもと・しょう)氏による個展『斑入 -ふいり-』は、加賀依緑園の「花月の間」で展開されています。金沢市を拠点に活動する東元氏は、「人の感情を動かす器作り」を信条に、一点一点の作品に込められた想いがじんわりと伝わるような展示を構成しています。
作品のテーマは、「異なる土が混ざり合う」という現象そのもの。ぐい呑み、徳利、オブジェなど約40点が並び、器という枠を超えた“土の表情”が空間に静かに響き渡ります。繊細でいて力強い、そんな東元氏の作風に触れることで、日常では見逃しがちな素材の奥行きに気づかされるはずです。
工藤 武『工藤武のヤキモノ』──歴史と風景を焼き込んだ自由な造形
5月2日から6月2日までは、石川県小松市在住の陶芸家・工藤 武(くどう・たけし)氏による個展『工藤武のヤキモノ』が開催されます。かつて九谷焼技術研修所で教鞭をとりつつ、自身も創作活動を続けてきた工藤氏。彼の作品は、インド・イスラーム文化、考古学的遺物、石や植物など、かつての旅や記憶が深層に息づくものばかり。
作品群は、茶器・酒器・花器・コーヒーカップ・ポットなど50〜60点以上。形状も装飾も、既存の美意識にとらわれず自由奔放。
「高温釉と低温上絵付の呼応が生み出す複雑な表情をぜひ見てほしい」と語る工藤氏。表現に境界を設けない柔軟さが、静かで熱い陶芸の魅力を物語っています。
展示会詳細
東元 生 展『斑入 -ふいり-』
- 会期:〜2025年4月29日(火・祝)
- 会場:加賀依緑園「花月の間」
- 時間:10:00~18:00(最終入場 17:30)
- 定休日:木曜日
工藤 武 展『工藤武のヤキモノ』
- 会期:2025年5月2日(金)~6月2日(月)
- 会場:加賀依緑園「花月の間」
- 時間:10:00~17:00(最終入場 16:30)
- 定休日:木曜日
歴史と自然に包まれた文化施設「加賀依緑園」
800年の歴史を誇る加賀依緑園は、明治時代に建てられた元旅館をリノベーションした文化観光施設。昭和天皇や吉田茂元首相などが足を運んだ迎賓館としての由緒ある場所で、2024年に新たな形で開館しました。
館内には、展示室やラウンジ、庭園、茶室、工芸ギャラリーなどが整備されており、歴史・文化・芸術が融合した空間となっています。とくに四季の風情を感じられる庭園や、幻の壁紙とされる「金唐革紙」の装飾が施された菊の間・桐の間は必見。
また、ギャラリー「縁煌(えにしら)」による工芸品の展示販売もあり、北陸三県にゆかりのある作家の作品に触れられるのも魅力の一つです。
アクセス&施設情報
- 施設名:加賀依緑園
- 所在地:石川県加賀市山中温泉南町ロ87-1
- 電話番号:0761-71-2683
- 開館時間:10:00〜18:00(最終入場17:30)
- 定休日:木曜日(祝日の場合は営業)
- 入場料:一般600円/団体490円
- 駐車場:山中温泉菊の湯駐車場またはこおろぎ橋駐車広場
おわりに
作家の“まなざし”と“手のぬくもり”が感じられる加賀依緑園での月替わり陶芸展。観光の合間に、静かな時間の中で土と語らうひとときを楽しんでみてはいかがでしょうか?
歴史と自然が融合するこの場所だからこそ味わえる、贅沢な「文化の体験」があなたを待っています。
